本研究では,未知語の意味推測に対する文脈量と日本語習熟度の影響を,語彙的複合動詞を対象に検討する。モンゴル語を母語とする中上級レベルの日本語学習者35名を対象に,未知語のみの提示,単文での提示,複文での提示,の三条件で未知語の意味を四択の多肢選択方式で推測させた。分析の結果,⑴上位群では文脈が増えればより正確な意味を推測できるが,下位群では未知語のみの提示と単文での提示の間に差がないこと,(2)文脈量が同程度の場合は上位群の方が正確に未知語の意味を推測できるが,未知語のみの提示の場合は上位群と下位群の間に差がないことが明らかとなった。このことは日本語能力が低い段階での語の意味推測には,意味推測のための情報がより多く必要であることを示している。