2009 年 142 巻 p. 156-162
年少者日本語教育では日本で生まれ育った外国人児童への日本語教育が新たな課題となっている。その教育の充実には,日本人児童や学齢期来日児童とは異なる彼らの日本語発達の特徴を把握することが不可欠である。小論では,就学後(6月)に日本生育外国人児童(8名)を対象に行ったインタビュータスクの会話資料を,日本人児童(7名)との比較を通して分析した。タスクの評価では,外国人児童は日本人児童に比べ,インタビューの報告タスクで達成度が低かった。また,会話のなめらかさや文の複雑さにおいて大きな差が見られた。会話の分析からは,日本生育外国人児童の場合,会話生成力,会話の流れの中で発話を理解する力,相手の発話に応じて新情報を提供したり情報を再構成したりする力が,日本人児童に比べて弱いと考えられた。ただし,特定文脈における発話資料に基づく試行的な調査であるため,今後は,調査対象者数を増やし分析方法を精緻化するなどし,検証の妥当性を高めていく必要がある。