日本語教育
Online ISSN : 2424-2039
Print ISSN : 0389-4037
ISSN-L : 0389-4037
研究論文
北京近代科学図書館編纂日本語教科書分析からみた占領初期の中国華北地方における日本語教育の一側面
――『初級日文模範教科書』から『日本語入門篇』へ――
川上 尚恵
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 146 巻 p. 144-158

詳細
抄録

 本稿では,北京近代科学図書館で編纂発行された日本語教科書『初級日文模範教科書』と『日本語入門篇』の分析を行い,編纂背景をふまえ,占領初期の華北における日本語教育の一側面を明らかにした。『初級日文模範教科書』は,国定国語教科書と内容が重なる部分と例文・会話文の部分からなっていた。教科書に付された「教授参考」では,対訳的ではない中国語を利用した教授が提唱されており,日本語の学習過程をふまえた学習者への配慮が見られた。しかし,それを入門用教科書として再編纂した『日本語入門篇』では,中国語での説明が増加し,「読書的な対訳法」に近づいた教科書となった。両者の編纂には日本人図書館職員・中国人日本語講師が関わっていたが,特に『日本語入門篇』には中国人の伝統的日本語学習法が強く反映していた。今後の中国人の日本語学習・教育史をふまえた研究の必要性を指摘した。

著者関連情報
© 2010 公益社団法人 日本語教育学会
前の記事 次の記事
feedback
Top