日本語教育
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実践報告
近代文語文を素材とする教育実践に関する一報告
庵 功雄
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2020 年 177 巻 p. 77-91

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抄録

 本稿は上級レベルの留学生を対象とする近代文語文講読の授業の実践報告である。この授業では,福沢諭吉と中江兆民の文章を原文で読んでいる。対象者は上級レベルの留学生だが,受講者に文語文法の知識は要求しない。授業の目的は,近代日本の思想家の思想を原文で読めるようになることと,近代語と現代語の違いを知ることを通して日本語の理解を深めることである。前者については,福沢の文章では基本的人権 (福沢の「権利通義」) について,中江の文章では為政者 (政治家,官僚) に求められる資質について考え,それを現在の日本社会と比較している。後者については,対照言語学的視点から近代語と現代語を比較し,近代文語文は形態素レベルで1対1に対応させることで現代語に訳せることを確認し,それを通して受講者の現代語の知識を深めている。

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© 2020 公益社団法人 日本語教育学会
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