2023 年 185 巻 p. 125-138
本研究では,ドイツ語を母語とする中上級日本語学習者を対象に,漢字2字熟語の意味推測課題を用いて,学習者がどのように推測を行ったかについて聞き取り調査を行った。その結果,学習者は漢字熟語を構成する個々の漢字の意味情報だけでなく,その漢字が熟語の左右どちらにあるかという位置情報に注目していること,全体的な傾向として右の漢字を重視し,漢字熟語の右の漢字が基本的に中心的な意味を担うと考えることを明らかにした。そのような知識は,明示的に与えられたものではなく,漢字を学習する中で学習者が自分で作り出したものであった。そして,そのような知識の影響によって,漢字熟語の意味推測がうまくいかなくなることが示された。この結果をふまえ,中級以降の漢字学習に必要な支援は何かを考察した。