「Xに行く」などの日本語のいわゆる「場所表現」は、Xの位置に現れる名詞句の統語論的または意味論的な制約について、名詞句Xの持つ「場所性」という観点から分析がなされてきた。また、認知言語学において場所性は主観的解釈の反映であると説明されてきた。しかしこれらの説明は循環論になっているという問題がある。そこで本稿では、ことばの意味を人間と環境との相互作用であるとする生態学的意味論の立場から、経験参照枠の概念を用いて場所表現の制約について分析し直す。これにより、場所性という概念によらない名詞の実際の使用に基づく客観的な分析を提供することが可能となる。