日本語の研究
Online ISSN : 2189-5732
Print ISSN : 1349-5119
最新号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
  • ──近世以降の疑問詞疑問文を中心に──
    衣畑 智秀
    2022 年 18 巻 1 号 p. 1-18
    発行日: 2022/04/01
    公開日: 2022/10/01
    ジャーナル フリー

    本稿では近世以降に起こった疑問文の歴史変化について論じる。中世末においては、疑問詞疑問文と肯否疑問文が、文末のカの有無によって区別され、疑問詞疑問文に文末カが用いられることはほとんどなかったが、現代共通語では自問の文脈においてカを使うことに不自然さはない。この変化を調べるため、『日本語歴史コーパス』から疑問詞疑問文の用例を抽出し、カの出現率の推移を見たところ、S字曲線を描きながら1700~1900年にかけて大きく上昇していくのが分かる。文末カは疑問詞疑問文に用いられるようになる最初から自問に偏り、また同じ時期に疑問詞を持つ間接疑問節もカによって標示されるようになることから、この時期にカに〈問いかけ性〉を失う変化が起き、これによって、カが疑問詞疑問文と肯否疑問文を区別せず用いられるようになったと考えられる。

  • 大江 元貴
    2022 年 18 巻 1 号 p. 19-35
    発行日: 2022/04/01
    公開日: 2022/10/01
    ジャーナル フリー

    名詞独立語文の中に「嘲り」の言語行動と結びついた「嘲り文」という文類型を見出し、その構造と名詞独立語文の体系における位置を明らかにした。嘲り文には2つの基本構造があり、1つは文末に〈延伸・自然下降〉を生じる構造(「よわむしー↘。」)、もう1つは「やー↘い」で文を開始する構造(「やー↘い、よわむし。」)である。名詞独立語文による嘲りは、このいずれかの構造に支えられて実現する。また、名詞独立語文の体系における「表出文」と「働きかけ文」という対立から見ると、嘲り文は働きかけ文に属し、「よわむし。」のような表出文よりもむしろ「おーい、高橋。」「よっ、節約上手。」のような、相手のことを呼びかける文やほめあげる文に近接する。構造に着目することで、連続的な言語行動を日本語がどのように切り分けているかを明瞭に捉えることが可能になり、名詞独立語文の体系的把握につながる。

  • 阿久澤 弘陽
    2022 年 18 巻 1 号 p. 36-52
    発行日: 2022/04/01
    公開日: 2022/10/01
    ジャーナル フリー

    本稿では,「xはPつもりだ」の三つの用法(意志,思い込み,仮想)の成立条件を考察し,「つもりだ」の意味を明らかにする。具体的には,埋め込み節述語の意味や形式に基づいた従来の〈意志〉と〈思い込み〉の成立条件がPの事態としてのあり方から捉え直されるべきであること,xとPの間にはxがPを意志的行為によって引き起こすという責任関係が成立していることを示す。また,主に従属節の用法である〈仮想〉は,主節がPという仮定的状況を想定した上でのxによる意志的行為でなければならないことを指摘する。その上で,①「つもりだ」の意味は,xの意志的行為を前提とした上でのxのPに対する認識の言明であること,②Pとxの意志的行為の関係づけによって「xはPつもりだ」には二種類の意味的特徴が認められることを明らかにする。

  • ──修飾と叙述に着目して──
    占部 由子
    2022 年 18 巻 1 号 p. 53-69
    発行日: 2022/04/01
    公開日: 2022/10/01
    ジャーナル フリー

    本稿は琉球諸語の形容詞重複形を対象とし,記述研究を用いた通方言的な比較によって,それが担いうる機能には動詞修飾,名詞修飾,叙述という階層が見いだせることを指摘する。これまでの琉球諸語研究では,各方言の活用体系を埋めることに焦点が当てられ,各方言の形容詞の体系の中でも重要な位置を占める重複形(例:八重山語石垣島白保方言におけるaga- 「赤」の重複形aga~aga「赤々」)はあまり注目されてこなかった。そこで本稿では近年の記述研究の蓄積をもとに,各方言における形容詞の重複形がどのような機能を担うかについて調査を行った。その結果,動詞修飾>名詞修飾>叙述という階層が見いだされ,この階層の成立には活用型形容詞の存在や,琉球諸語の形容詞連用形の機能が「高くする」のような補助動詞構文に特化していることと関連していることを述べる。

〔研究ノート〕
  • 辻本 桜介
    2022 年 18 巻 1 号 p. 70-77
    発行日: 2022/04/01
    公開日: 2022/10/01
    ジャーナル フリー

    先行研究において、古代語に間接疑問文は存在しないと考えられている。これに対し本稿では以下のことを指摘し、中古語の引用句「…と」が間接疑問文に相当する用法を持っていたことを示す。

    まず、「いつと」「誰と」のように不定語をトが直接承ける用例は少なくないが、現代語の「いついつ」「誰々」のように引用句内の一部を伏せる形(プレイスホルダー用法)が使われたものか、間接疑問文と同様に解すべきものかが曖昧である。これに対し「年ごろは世にやあらむと」のように肯否疑問文を含むもの、「いかで降れると」のように引用句末の活用語が不定語に呼応して連体形となるものは、引用元の文の一部を伏せるだけのプレイスホルダーが使われているとは考えにくく、間接疑問文と同様の解釈になりうる。また「…逃げにけり。いづちいぬらむともしらず。」のように引用句内の不定語以外の情報が述語の主体にとって既知である場合も間接疑問文と同様に解すのが自然である。

〔書評〕
feedback
Top