中古和文作品から会話文・心内文を集める方法として、“引用句「…と」の内部に2つ以上の文が入っている場合に、それをリアルな台詞の引用と認定する”という手続きを提案する。
BCCWJの「文学」ジャンルで「…と+述語」の用例を調査すると、複数の文が引用される述語(発話を表す)の場合は鉤括弧が使用され、複数の文の引用が難しい述語(思考・知覚を表す)の場合には鉤括弧が使用されない、という相違が見出される。これにより、鉤括弧の有無が引用句内の言葉のリアリティと相関することが確認される。
中古和文作品もこれに似た傾向を示すが、知覚を表す「…と見る」「…と聞く」のように複数の文を引用した形が現れにくいものでも、校注者は鉤括弧を多用している。また、BCCWJの調査結果と異なり、思考を表す「…と思ふ」などの場合にも複数の文が引用される例が目立つので、中古和文からはリアルな台詞としての心内発話を集めることができる。