日本語の研究
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語彙史・語構成史上の「よるごはん」
橋本 行洋
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2007 年 3 巻 4 号 p. 33-48

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抄録

<夕食>を意味する「よるごはん」は、現在若年層を中心に使用される新語と見なされているが、その成立は少なくとも第二次大戦前後にまで遡ると見られる。当初は児童が用いる稚拙な印象の語であったため、文字資料に残されることが少なかったが、近年では夕食時間帯の遅延や朝食の欠食という食環境の変化に伴い、これが妥当な表現という意識が生じて使用が拡大し、新聞記事や国会発言および小学校教材等でも使用されるという、《気づかない新語》としての性格をも有するに至っている。「よるごはん」の成立要因としては、<夕食>時間帯表現における「よる」の使用があげられるが、さらにその遠因に、二食時代の「あさ」-「ゆう」の対応に「ひる」が加わった結果、「ひる」-「よる」という対応意識の生じたことが存すると考えられる。「よるごはん」の出現は、食事時間帯語彙に「よる」が加わった点で新しいものであるが、旧くは存在しなかった「よる」を前項要素とする複合語という点においても特筆すべき存在で、語彙史・語構成史の両面から注目すべき語と言える。

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