日本観光学会誌
Online ISSN : 2436-7133
Print ISSN : 1341-8270
EUによるLEADERプログラムの現状と課題-スペインの事例を中心に-
小川 祐子
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2000 年 36 巻 p. 58-69

詳細
抄録

EUが行なうさまざまなプログラムを通じた観光政策の展開は, 今日のスペインの観光においてその重要性を拡大させている。本稿では, 特に農山村部の開発を対象としているLEADERプログラムを取り上げる。本プログラムの中で観光の果たしている役割は大きく, 第I期のプログラムでは, 半数以上の活動がルーラルツーリズムに関わるものであった。 筆者は, 観光事業による歴史的建造物の動態保存という観点から, スペインの観光事業をテーマとしているが, 各地方にみられる農山村部の特色ある民家建築をはじめとする社会文化遺産の保存と活用は, ルーラルツーリズムの現状と展望とに密接に関わっている。こうした問題意識から, 本稿は,ルーラルツーリズムをめぐる概念, LEADERプログラムの概要を整理し, スペインにおける機能をとらえながら, 本プログラムの公的資金援助が, ルーラルツーリズムのみに偏重し, 観光の過剰開発をもたらし, ルーラルツーリズムの資源である自然環境や民家等の社会文化資源を破壊する原動力になりかねない危険性をはらんでいることを明らかにした。

著者関連情報
© 2000 日本観光学会
前の記事 次の記事
feedback
Top