2007 年 48 巻 p. 88-100
我が国は、戦後飛躍的な経済成長を遂げたが、この経済成長をもたらした日本型システムは、高度に統制され た体制で、その成功ゆえに社会の硬直化が進み変革を迫られている。この変革期に経済成長を促進するための新 たな国家目標として浮上したのが観光立国であるが、その先行きは楽観できるものではない。戦後、我が国は真に豊かな社会とは何かを深く検証する余裕もなく経済の領域のみの豊かさを追求し今日に至っている。観光立国とは本来先進国型モデルで、その本質は国や地域、また、そこで生活する人々の魅力であり、経済の領域でも、また非経済の領域でも豊かな社会であることが不可欠である。観光立国は、硬直化した統制社会での実現は困難で、柔軟性、創造性に富む社会である必要がある。