抄録
本稿では、周山県総社市の国指定史跡「鬼ノ城」の事例を取り上げ、日本における史跡の活用をめぐる可能
性と課題について考察する。従来の文化財政策は保存重視であったが、近年、活用が盛んに論じられ、史跡の
整備事業も積極的に推進されている。文化観光の拠点として、また、地域おこしの核として、史跡を役立てようとする期待も高い。その一方で、史跡の具体的な活用のあり方をめぐっては、行政、民間来者、市民団体などの間で、考え方に大きな違いがある。今後、何の目的で、誰のために、如何なる形で文化遺産を活用してゆくのかについて、各関係主体の間での開かれた議論と長期的な相互協力関係の構築が必要である。