2013 年 54 巻 p. 54-65
本稿では、歴史観光をとおして史跡・会津鶴ヶ城と会津藩の人々の行動をインセンティブ(個人を動機づけ る誘因)論の観点から考察する。幕末における会津藩の人々の行動と生き方は、近代日本史に偉大な足跡を残 した。とりわけ、少年兵の組織である白虎隊の隊士の行動と生き方は、永い間、日本人の間で語り継がれてき た。彼らの行動に影響を及ぼしたのは、家訓と幼年時代からの教育である。それは、徳川本家あっての会津藩 で、藩士はなによりも本家に忠誠を抱き、次に主君への忠誠であった。こうした価値観は、家庭や藩校での教 育、それに交際仲間の影響などで、漸次、個々人の行動に影響を及ぼした。それゆえに、ここではまず第1に、 徳川本家と会津藩との関係、次に、家訓と藩校教育を日新館観光をとおして認識し、最後に、幕末の白虎隊士 に及ぼした思想的インセンティブを考察する。