日本観光学会誌
Online ISSN : 2436-7133
Print ISSN : 1341-8270
農家レストラン名称の東西比較分析
片山 達貴大江 靖雄
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ジャーナル オープンアクセス

2023 年 64 巻 p. 24-32

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抄録

農家レストランは、農家所得の増大を図る6次産業化の役割のみでなく、ツーリズムや都市農村交流としても 注目されている。しかし、近年ウェブサイトでのマーケティングを行う事業体が増えており、訴求性の解明や需要のあるコンテンツの把握は経営上重要な論点であるものの、研究成果は限られている。そこで本稿では、消費者への第一印象が決まる農家レストラン名称を分析対象とし、関東地方(183件)と近畿地方(108件)を比較しながら訴求内容を明らかにした。まずKH Coderを用いたテキスト分析から2地域の特徴的な要因を析出し、次に名称を約90種類に分類し、2値ロジットモデル分析から2地域の決定要因を解析した。その結果、関東地方の農家レストランは和食が主な形態であり、田舎や農地を想起させる言葉で農村への訪問ニーズを引き出し、定番の言葉や読みやすさで消費者の認知と記憶を容易にしようとしていることが判明した。これに対して、近畿地方の農家レストランは品質や清潔さをアピールし、歴史性や地域資源との連動、多種多様な料理や食材で差別化をし、顧客の関心を高めようとしていることが判明した。以上の点から、関東地方と近畿地方の農家レストラン名称の訴求内容は差異があり、近畿地方は関東地方より多様性に優れ、訴求力の高い差別化を図っているといえる。

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