抄録
本研究は、障害当事者がいわゆる「旅前から旅後」までの全過程において、快適に利用できる夜行フェリー(長距離フェリー)のあり方を探ることを目的としている。(株)名門大洋フェリー、エイブル・パフォーマンス集団「ガラ(柄)」1 )の協力を得て、視覚障害、肢体不自由、精神障害、発達障害など様々な障害特性を持つ当事者 5 名と介助者、大学院生スタッフ、フェリー事業者の添乗要員を含む計 9 名で旅行を実施した。参与観察、半構造化インタビュー、アンケート調査等の発話や記述を、KJ法に基づいて分類し、その結果を質的に分析した。分析した結果、バリアは「物理的」「情報的」「心理的」「制度的」の 4 つのカテゴリーに分類された。これらのバリアは、移動の制限や情報不足、不安・ストレス、孤立感、諦めといった負の感情を引き起こす一方、事業者側と障害当事者との「建設的対話」を実施することで、双方に余裕が生まれ、結果的に顧客満足につながる可能性が示唆された。