抄録
酸化ジルコニウムの結晶構造とその粒子表面に存在する酸点および塩基点の性質との関係を知るため,450°C付近の低温度のか焼で単斜晶または正方晶の単一構造を有する試料をそれぞれ調製し,それらの酸塩基触媒特性を比較した。
塩化酸化ジルコニウム水溶液をアンモニア水で加水分解するとき,到達pH値を調節することで,生成する酸化ジルコニウムの結晶構造が異なり,pH3とpH7で調製した場合にはほぼ単一相の正方晶と単斜晶がそれぞれ生成した。それらの単位表面積当たりの酸塩基量を測定したところ,いずれの構造でもほぼ同等の酸塩基点の密度を示した。しかしながら,NH3とCO2の昇温脱離スペクトルから,低温度か焼で得られた単斜晶試料で強い酸点と塩基点の両方が存在することがわかった。さらに,1-ブテン異性化反応では,単斜晶構造の微粒子が最も高い活性を示すとともに,反応の活性化エネルギーの値も低くなることが判明した。この強い酸点と塩基点は,単斜晶構造の酸化ジルコニウムの微粒子化に伴う粒子表面の構造欠陥に起因するものと考えた。