抄録
ポリ(塩化ビニル)(PVC)の熱分解による脱塩化水素特性を,FT-IRスペクトル解析とガスクロマトグラフによる生成物の分析より調べた。350°C以上に加熱すると,PVCからの塩化水素生成量は,ほぼ一定となった。しかし400°C以上に加熱すると,ポリエンの分解に伴い,生成油中に微量の有機塩素化合物が認められ,温度の上昇とともにその量が増加した。したがって脱塩化水素反応の終了後も,わずかの塩素が残分中に残存していると考えられる。脱塩化水素残分のFT-IRスペクトルの観測から,ゴーシュ配列のイソタクチック構造のPVCは,シンジオタクチック構造のものよりも脱塩化水素反応が遅く,400°Cで120minの加熱条件で脱塩化水素した残分中でも,そのスペクトルがわずかに残存しているのが観測された。