日本化学会誌(化学と工業化学)
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一般論文
オレンジII色素のヤギ毛への吸着
加藤 紀弘荒井 美砂子酒井 保藏三田村 譲嗣高橋 不二雄
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2001 年 2001 巻 1 号 p. 11-17

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抄録

ヤギ毛への酸性色素オレンジIIの吸着に関して,毛に浸透し色素を毛に吸着しやすくすると考えられているベンジルアルコールの影響,色素吸着に及ぼすpHや温度,グリシンや各種ヒドロキシ酸の存在などの影響を定量的に検討した.
 ベンジルアルコール無添加の場合,ΔSの値はすべて負になり,またΔHは−25 – −100 kJ mol−1の範囲にあるので,ヤギ毛のタンパク質に対して色素は主に水素結合あるいはイオン結合していると推察する.グリコール酸,乳酸などヒドロキシ酸の場合は,リン酸よりもΔHがより負側にシフトした.グリシンでは,低pHになるとH3N+–CH2–COOよりH3N+–CH2–COOHが多くなり,色素は毛に吸着しやすい.
 グリコール酸とともにベンジルアルコールを添加すると,ΔHΔSは共に正になった.ベンジルアルコールは毛に浸透し色素吸着面を広げるので,色素の吸着速度は速くなり,また色素飽和吸着量もベンジルアルコール無添加に比べると大きい.一方,平衡定数は小さくなり,色素のヤギ毛タンパク質への結合を阻害するようである.ベンジルアルコールがヤギ毛の内部へ浸透することは,色素吸着がLangmuir吸着等温式で扱うような簡単な吸着平衡では説明できないことを示している.

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© 2001 The Chemical Society of Japan
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