日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
2001 巻, 1 号
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総合論文
  • 中山 敦好, 川崎 典起, 山本 襄, 前田 育克, 相羽 誠一
    2001 年 2001 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2001年
    公開日: 2004/02/10
    ジャーナル フリー
    脂肪族ポリエステル類を合成し,その酵素加水分解性をポリマーの化学構造と関連付けて考察した.対象としたポリマーは主として乳酸系コポリマー,γ-ブチロラクトンを原料とするコポリマー,オキシラン/ラクトン系コポリマー,ヒドロキシ基を持つコポリマーである.γ-ブチロラクトンはきわめて重合しにくいモノマーであるが,分子間エステル交換反応を利用することにより,L-ラクチドやほかのラクトン類と共重合させることができ,その含有率は最大30%程度であった.長鎖脂肪族ジカルボン酸ジグリシジルエステルと各種ジカルボン酸との重付加により,ヒドロキシ基を持つポリマーが合成され,そのヒドロキシ基は容易にアシル化反応を受けた.この反応の利用により,ヒドロキシ基を持つポリマーは機能性生分解性プラスチックの開発のための原料として有望であることが示された.生分解性の評価手法として,リパーゼによる酵素加水分解法を用いた.分解に及ぼす高分子鎖の化学構造の因子として,コポリマーの組成,主鎖中の連続メチレン鎖数,側鎖置換基の影響について考察した.生分解性はコポリマーのある組成比で極大を示すが,ポリマー中のエステル含有率やランダム性,結晶性も影響を及ぼす.メチル側鎖は分解を抑制し,単位構造中のメチレン鎖数は3–5の場合に大きな生分解性を示した.エステル結合でつながる側鎖を持つポリエステルでは主鎖よりも側鎖のエステル結合の方が分解を受けやすい.これらの知見は,プラスチックの生分解性をコントロールするための分子設計に重要である.
一般論文
  • 加藤 紀弘, 荒井 美砂子, 酒井 保藏, 三田村 譲嗣, 高橋 不二雄
    2001 年 2001 巻 1 号 p. 11-17
    発行日: 2001年
    公開日: 2004/02/10
    ジャーナル フリー
    ヤギ毛への酸性色素オレンジIIの吸着に関して,毛に浸透し色素を毛に吸着しやすくすると考えられているベンジルアルコールの影響,色素吸着に及ぼすpHや温度,グリシンや各種ヒドロキシ酸の存在などの影響を定量的に検討した.
     ベンジルアルコール無添加の場合,ΔSの値はすべて負になり,またΔHは−25 – −100 kJ mol−1の範囲にあるので,ヤギ毛のタンパク質に対して色素は主に水素結合あるいはイオン結合していると推察する.グリコール酸,乳酸などヒドロキシ酸の場合は,リン酸よりもΔHがより負側にシフトした.グリシンでは,低pHになるとH3N+–CH2–COOよりH3N+–CH2–COOHが多くなり,色素は毛に吸着しやすい.
     グリコール酸とともにベンジルアルコールを添加すると,ΔHΔSは共に正になった.ベンジルアルコールは毛に浸透し色素吸着面を広げるので,色素の吸着速度は速くなり,また色素飽和吸着量もベンジルアルコール無添加に比べると大きい.一方,平衡定数は小さくなり,色素のヤギ毛タンパク質への結合を阻害するようである.ベンジルアルコールがヤギ毛の内部へ浸透することは,色素吸着がLangmuir吸着等温式で扱うような簡単な吸着平衡では説明できないことを示している.
  • 山本 伸司, 松下 健次郎, 花木 保成
    2001 年 2001 巻 1 号 p. 19-25
    発行日: 2001年
    公開日: 2004/02/10
    ジャーナル フリー
    アルミン酸ニッケル担持Pd触媒系が,Light-off活性や三元触媒性能,特に,NOx浄化性能に優れる理由を明らかにするために,アルミン酸ニッケルの吸着特性や還元特性,助触媒作用などについて検討した.アルミン酸ニッケル表面のNi2+サイトは,NO吸着点として酸化および還元いずれの雰囲気下でも有効に作用するが,特に還元雰囲気ではNi2+サイトが多量に露出するためNO吸着量が増大することがわかった.アルミン酸ニッケルはNiOに比べてH2還元に対する抵抗力が強く約800 °Cで還元されるが,還元されても再酸化でほぼ可逆的に回復すること,また,パラジウムを担持するとH2還元が起こりやすくなり約400 °Cで部分的な還元が起こり,高温側の還元ピークも約50 °C低温側へシフトすることがわかった.さらに,モデルガス(C3H6–NO–O2系)による活性試験を行った結果,アルミン酸ニッケル担持Pd触媒はγ-Al2O3担持Pd触媒に比べて,量論比およびリッチいずれの雰囲気下でもはるかに大きなLight-off活性およびNOx浄化活性を示すことが確認された.これらの結果およびPdの状態は両担体で大きな差はないという結果から,アルミン酸ニッケル担体が示す優れた担体効果は,この担体のNO吸着量が大きく,吸着活性サイトであるPdへNOを速やかに供給することにより発現するものと考えられる.
  • 野島 繁, 飯田 耕三, 小林 敬古
    2001 年 2001 巻 1 号 p. 27-35
    発行日: 2001年
    公開日: 2004/02/10
    ジャーナル フリー
    リーンバーンガソリンエンジン排ガス用脱硝触媒として,10%H2O–N2雰囲気,700 °Cで活性化処理を行ったメタロシリケート担持Ir触媒(以下,本触媒を活性化担持Ir触媒と記す)を調製し,その触媒活性を評価した.活性化担持Ir触媒の作動温度広域化と未燃炭化水素の排出抑制を目的に,活性化担持Ir触媒を前段に,Pt–Rh/Al2O3触媒(三元触媒)を後段に設置した二段触媒の活性評価を行った.本二段触媒はリーン雰囲気において250–500 °Cの広範囲温度にて脱硝活性を示し,さらに,300 °C以上にて未燃炭化水素をほとんど除去できた.二段触媒は燃料希薄雰囲気(以下,「リーン雰囲気」と記す)および化学量論雰囲気ともに高い定常脱硝活性が得られ,さらにリーン雰囲気から化学量論雰囲気へ過渡変化する際においても優れた脱硝活性を示した.活性化担持Ir触媒はリーンバーンガソリンエンジン実排ガスにおいて400 °Cで最大70%の脱硝率を示した.また,活性化担持Ir触媒は実エンジン排ガスを用いた660 °Cリーン雰囲気ガスおよび800 °C燃料過剰雰囲気(以下,「リッチ雰囲気」と記す)ガスの過酷な条件にさらしても,十分な耐久性を示すことがわかった.
  • 野島 繁, 飯田 耕三, 小林 敬古
    2001 年 2001 巻 1 号 p. 37-44
    発行日: 2001年
    公開日: 2004/02/10
    ジャーナル フリー
    MFI型メタロシリケート担持Cu触媒を用いてNH3の酸化分解に関する検討を行った.本触媒は模擬排ガス中のNH3を反応温度250–400 °Cにおいて選択的にN2へ転換することができる.本触媒を用いたNH3酸化分解反応は触媒の酸量とりわけ強酸量が多いほど,さらにCu担持量が多いほど低温のNH3酸化分解活性およびN2選択性に優れている.このことから,本触媒の活性点はメタロシリケート担体の強い酸性点に配位したCuであることが示唆された.本触媒上におけるNH3酸化分解反応機構をNH3吸着昇温脱離法,NH3–O2パルス反応法および赤外吸収スペクトル法により調べた.まずNH3が触媒上に吸着し,NH4+を形成する.次にO2が配位して酸化脱水反応によりN2結合種の中間体を形成し,さらにO2配位による中間体の酸化脱水反応によりN2が生成することが推定された.
  • 中澤 克仁, 片山 恵一, 坂村 博康, 安井 至
    2001 年 2001 巻 1 号 p. 45-53
    発行日: 2001年
    公開日: 2004/02/10
    ジャーナル フリー
    PVC(ポリ塩化ビニル)は燃焼によりHCl(塩化水素)を発生するため,焼却炉の腐食や火災時の人的な被害など,さまざまな問題を抱えている.
     本研究では,PVC中に混入することでHCl捕捉効果が確認されているCaCO3およびLi2CO3の粒径調整や脂肪酸による凝集防止を行い,単独または複合配合したPVC試料を作製して,熱分解時に発生するHClの捕捉効果を調べた.また,鉄化合物は熱分解を促進することが知られており,粒径処理等を行ったFeO(OH)を混入したPVC試料についても燃焼実験を試みた.
     その結果,CaCO3またはLi2CO3単独よりも複合配合すること,特にCaCO3 : Li2CO3 = 3 : 1(モル比)の配合比付近でPVC燃焼におけるHCl発生を効果的に捕捉することが認められた.さらに鉄化合物(FeO(OH))を混入したPVC試料のHCl捕捉効果でも,FeO(OH)の混合配合によるHCl捕捉効果の向上を得た.
技術論文
  • 川村 和郎, 小澤 真一郎, 有賀 敦
    2001 年 2001 巻 1 号 p. 55-60
    発行日: 2001年
    公開日: 2004/02/10
    ジャーナル フリー
    ケブラークロスとフルフリルアルコール樹脂(フラン樹脂)から作製した積層複合材料の熱処理に伴う強度変化を,600 °C以下の温度で熱処理した試料片の曲げ試験から明らかにした.積層複合材料の繊維含有量は39 vol%で,マトリックスのフラン樹脂とほぼ同等の曲げ強度を示した.熱処理温度200–500 °Cの間で繊維強化効果が認められた.クロス積層複合材料の特徴は,荷重 vs. たわみ曲線に現れた.すなわち,Fig. 8cに示したように,ある荷重下で突然の曲げ破壊は起こらなかった.しかし,炭素化が進行する500 °C以上の熱処理試料ではこの特性は消失した.熱処理試料の曲げ強度(σ)とかさ密度(ρ)には,σρn の関係が認められた.さらに,クロス積層面に平行方向について,曲げ弾性率対曲げ強度のプロットをとると直線関係となったが,垂直方向では直線関係とならなかった.
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