日本化学会誌(化学と工業化学)
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Print ISSN : 0369-4577
一般論文
漆塗膜の硬化過程における第一級アミン類の影響
渡部 修長井 勝利
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2001 年 2001 巻 2 号 p. 103-110

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抄録

漆の主成分であるウルシオールとアミン類との反応性の知見より,硬化反応と耐光性における漆に対する第一級アミン類の添加の効果から,漆の硬化反応と添加剤としてのアミン類の分子構造の関係を探る調査を行った.漆塗膜は,ジアミン,アミノ基を持った星状構造の多分岐高分子(デンドリマー)やその他のアミノ化合物のような第一級アミン類を加えて硬化させ,光照射を行った.
 第一級アミンはただちにウルシオールと反応するが,これらの反応性はアミノ基の隣接基により,反応は長いポリメチレン鎖で隔てられている第一級アミノ基を持っているアミンでは,なめらかに進行した.アミンの立体構造は,ウルシオールとのアミンの反応と漆塗膜の硬化反応の阻害とに重大な影響を与えるようだった.
 そのうえ,ジアミン類と四つの第一級アミノ基を持つ星状構造の多分岐高分子(第一世代のデンドリマー)は,漆塗膜において微結晶化のための核生成剤として働き,低湿度での硬化を可能にした.

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© 2001 The Chemical Society of Japan
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