抄録
近年,さまざまな手法によるマイクロカプセル作製が研究されている.本研究では,印刷分野において発泡抑制剤として使用される,トリメリット酸無水物(TMA)のマイクロカプセルトナーを,コアセルベーション法の一種である有機溶媒中での相分離(溶媒置換)法により作製した.カプセル材料を決定するために,樹脂溶解度パラメーターを利用した.カプセル壁材料にはエチレン-メタクリル酸共重合樹脂を,溶媒置換時の良溶媒にはトルエン(溶媒(a))を,貧溶媒(分散媒)には枝分れ鎖脂肪族炭化水素系溶媒[Isopar-L(溶媒(b))]を使用した.両溶媒,カプセル壁材料およびTMA間には,次の関係が要求される.(1)壁材料は溶媒(a)に完全に溶解する.(2)TMA粉末は溶媒(a)に分散するが,溶解しない.(3)壁材料およびTMA粉末は溶媒(b)に溶解しない.帯電制御剤として,レシチンおよび塩基性バリウムペトロネートあるいは塩基性カルシウムペトロネートの混合物を使用することで,正あるいは負の任意のトナー極性にすることができた.作製されたマイクロカプセルトナーは,市販の印刷機で印刷可能であり,所望の壁紙発泡抑制効果が得られた.