日本化学会誌(化学と工業化学)
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Print ISSN : 0369-4577
総合論文
新規運転席エアバッグ(自動車)用インフレータ(98パイロ)の開発
市野 昌彬横山 拓志小田 愼吾岩井 保範
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2002 年 2002 巻 3 号 p. 281-288

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抄録

作動中にガス発生速度が増加する性質を持ちアジ化ナトリウムを用いない新規自動車エアバッグ用ガス発生器を開発した.本ガス発生器は,無毒なガス発生剤,小型軽量,乗員加害性低減,低原価の特長を持つ.ガス発生剤は燃料成分としてのグアニジン化合物,酸化剤としての金属硝酸塩,無機添加物とバインダー成分からなり,ガス発生剤を構成するすべての成分はLD50が1000 mg/kg以上であり環境汚染の可能性が低い.無機添加物は酸化剤から生成する残さと速やかに結合する成分を選択している.このことによりガス発生器の構造を単純化(小型 · 軽量化)することが可能となり,空気中に放出される残さ微粒子も大幅に減少した.本ガス発生剤は押出し成形法によって円筒形に成形している.径と長さを制御することにより,燃焼後半にガス発生速度を増加させることができる.このことによって,ガス発生器作動中にガス発生速度を上げることが可能となり,乗員加害性が低く拘束性能が高いという相反する目標を実現した.これらの特徴が市場から認められ,本ガス発生器の販売数は年間約300万個に達しさらに増加が見込まれている.

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© 2002 The Chemical Society of Japan
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