日本化学会誌(化学と工業化学)
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総合論文
電解により生成した有機二価アニオンの分子間電荷移動相互作用と分子化合物生成能
奥村 典子宇野 文二
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2002 年 2002 巻 3 号 p. 289-300

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抄録

有機π電子系二価アニオンの特異的性質に基づく分子認識,それに伴うn-σおよびπ-π型電荷移動(CT)錯体生成能とその電気化学的制御に関する最近の研究成果を記した.
 電解により生成するキノン類二価アニオン(PQ2−)の水素結合錯体の構造と電子状態を明らかにした.この水素結合は強いn-σ型電荷移動によって支えられ,キノンの構造的特徴を反映してπ電子系に多大な影響を与えた.水素結合はn-σ型電荷移動であるにもかかわらず,πフロンティア軌道によって引き起こされるPQ2−の機能を制御可能であることが示された.これらの結果は,生物活性キノンの機能に関する水素結合の役割に対して基礎的知見を与えるものと考えられる.
 一方,TCNE2−およびクロラニル二価アニオン(CL2−)のは4電子系のビフェニレンとπ-π型CT相互作用することを実験的に証明し,この錯体生成は二価アニオンが4分子を分子軌道レベルで認識した多点の相互作用によることを明らかにした.この結果,電位制御によるHOMO-LUMO相互作用がスイッチされ,色と構造の異なる二つの安定な錯体生成系を提案することができた.この結果は,酸化還元反応に制御された分子化合物生成を用いる分子スイッチや機能性分子構築に基礎的な知見を与えるものと考えられる.

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© 2002 The Chemical Society of Japan
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