抄録
1-プロパノール水溶液の構造に関する知見を得るため,Kirkwood-Buff(KB)積分G11,G22,G12 (1 : 1-プロパノール,2 : 水),1-プロパノールの濃度揺らぎN<(Δx1)2>,密度揺らぎ<(ΔN)2>/N,密度揺らぎと濃度揺らぎの相関<ΔNΔx1>,両成分の密度揺らぎ<(ΔNi)2>/<Ni>および両者の相関<ΔNiΔNj>/<Nj>を,全濃度範囲,283.15–353.15 Kの温度範囲で算出した.KB積分は,等温圧縮率kT,過剰モルギブズエネルギーGmEおよび過剰モル体積VmEなどの熱力学量より計算した.続いて西川の方法により,KB積分の値を,各種揺らぎの値に変換した.G11, G22, N<(Δx1)2>, <(ΔN)2>/Nおよび<(ΔNi)2>/<Ni>は,x1≈0.2に極大値が出現し,温度上昇とともに増大した.一方,G12,<ΔNΔx1>および<ΔNiΔNj>/<Nj>は同じ濃度において極小値が出現し,温度上昇とともに減少した.しかし,x1>0.3の濃度領域では,これらの温度依存性は逆転した.以上のことより,1-プロパノール水溶液の構造に関して,次のように解釈できる.x1<0.3では,温度上昇とともに1-プロパノール分子どうしや水分子どうしが会合し,その結果ミクロな相分離が進行する.これに対して,x1>0.3では,温度上昇とともに1-プロパノール-水間の会合が進行する.