2002 年 2002 巻 3 号 p. 393-397
あらかじめ,チオ硫酸イオンを層間に取り込んだMg/Al-LDH前駆物質を合成し,そののち前駆物質とAg+イオンとを水溶液中で反応させることにより層間にAg+イオンを取り込んだ層状複水酸化物(Ag+-LDH)を合成した.Ag+-LDHのFT-IRスペクトルの解析から,層間のAg+イオンはチオ硫酸イオンの末端硫黄原子が2個配位した直線型構造を持つことがわかった.この固体の示差熱曲線中には,前駆物質と類似した熱変化が観測されたが,幾つかのピークではAg+イオンの取り込みによりピーク温度がシフトした.また,それぞれの固体の組成式をよく支持する熱重量曲線が得られた.Ag+-LDHの粉末X線回折図には,取り込んだAg+イオン量の増加とともに,(002)回折線強度が相対的に増加した.これは,層間に取り込まれたAg+イオンが,層に平行に規則的に並んだ格子面を持つ新たな結晶格子を形成したためと考えた.
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