日本化学会誌(化学と工業化学)
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一般論文
スギ(Cryptomeria japonica D. Don)辺材およびその構成成分から調製した木酢液の分析
松下 洋一菅本 和寛日高 健一松井 隆尚
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2002 年 2002 巻 3 号 p. 385-391

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抄録

スギ(Cryptomeria japonic D. Don)辺材木粉からKlasonリグニン,α-セルロースおよびヘミセルロースをそれぞれ分離した.スギ辺材と分離した構成成分の熱重量分析(TG)と示差熱測定(DTA)を行い,熱分解開始温度が辺材で258 °C,Klasonリグニンで342 °C,α-セルロースで280 °C,ヘミセルロースで153 °Cとなることがわかった.スギ辺材と分離した構成成分を400 °Cで炭化して得られた木酢液を毛管GC分析した結果は,メタノール,ピロカテコールおよびグアイアコール類がリグニンから,シクロテンおよびマルトールがセルロースから,フラン類がセルロースとヘミセルロースから,および酢酸が3種の構成成分から由来することを示唆する.スギ辺材を炭化温度と保持時間を変えて炭化して得られた木酢液の成分組成の分析から,250 °C · 保持6時間でフラン類とマルトールの生成が終結し,300 °Cでピロカテコールやグアイアコール類の生成が活発になることがわかった.この結果は,スギ辺材では,ヘミセルロースやセルロースの熱分解が250 °Cで活発になり,リグニンの熱分解は300 °C付近になってから活発になることを示唆する.

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© 2002 The Chemical Society of Japan
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