日本化学会誌(化学と工業化学)
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一般論文
ポリフェノール修飾β-シクロデキストリン-遷移金属錯体触媒を用いた過酸化水素による芳香族スルフィドの不斉酸化
櫻庭 英剛前川 大瀧澤 聡入内島 さちこ山田 学美
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2002 年 2002 巻 3 号 p. 399-407

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抄録

ポリフェノール(没食子酸(GA),プロトカテク酸(PA,NH-PA),2,3-ジヒドロキシ安息香酸(2,3-HBA))ならびにサリチル酸(SA)および安息香酸(BA)の6種を,それぞれβ-シクロデキストリン(β-CD)の第一級ヒドロキシ基側に一置換させたβ-CD修飾体を合成した.その遷移金属イオン錯体の不斉触媒効果をpH 1–7の領域で,芳香族スルフィド(フェニル,ナフチルおよびフェナントリル誘導体)の酸化反応で調べた.ポリフェノール修飾β-CD誘導体のフェニル環の3-,4-,5-位に位置する隣接ヒドロキシ基は,Mo(V)イオンの共存する中性領域(pH 6)でメチル1-ナフチルスルフィドを不斉触媒酸化し,対応するスルホキシドの(R)-体を20–55%の不斉収率で生成した.これに反して,修飾基のフェニル環の2-位にヒドロキシ基があると,(S)-スルホキシドが19–35%eeで得られた.ポリフェノールのβ-CDとの結合様式は不斉収率に影響を及ぼし,PAのエステル化修飾体(β-CD-PA)のMo(V)錯体はアミド化修飾体(β-CD-NH-PA,41%ee(R))より高い不斉収率(55%ee(R))をもたらした.このメチル1-ナフチルスルフィドの酸化で得られた光学純度は,基質として用いた芳香族スルフィドの中で最大値であった.やはり,フェノール性ヒドロキシ基を持たないβ-CD-BAの添加では不斉誘起は全く起こらなかった.β-CD-PAのMoとW(4d-,5d-ブロック)金属錯体では(R)-スルホキシドを36–55%eeで生成し,3d-ブロック金属イオンとの錯体では(S)-スルホキシドが10–45%eeで得られ,互いに逆の不斉挙動を示した.

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© 2002 The Chemical Society of Japan
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