日本化学会誌(化学と工業化学)
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一般論文
感潮河川域における底質中の形態別リンの分布特性
立本 英機成田 高秀相川 正美
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2002 年 2002 巻 3 号 p. 427-433

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抄録
感潮河川域における底質中の形態別リンの分布特性を把握するために花見川(千葉市)を選び,形態別リン濃度および他の項目との関連性について検討した.
 底質の採取は9地点を選び,エクマンバージ採泥器を使用し,同時に流速も測定した.
 形態別リンは,硫酸 · 硝酸分解抽出法により検出されるリンを全リン(T-P)とし,Williamsらの形態別分画定量法に基づいて得られたCDB-P,NaOH-PおよびHCl-Pの合計量を無機態リン(I-P)とした.有機態リン(Org-P)は,全リンと無機態リンとの差から求めた.
 形態別リン濃度および流速の測定結果から,河川形状の変化により流速が遅くなる地点では,CDB-P,NaOH-PおよびHCl-Pが多く堆積し底質中の濃度が上昇することを認め,また上流地点より流速が速くなる地点では,底質中のCDB-PおよびNaOH-P濃度が減少することが明らかになり,現場実験においてもCDB-PおよびNaOH-P濃度と流速の関係を再確認した.
 形態別リン濃度と同時に,底質のpH,底質中のFeおよびAl濃度も定量し,形態別リン濃度との関係を調べた.
 上流地点よりpH値および底質中のAl濃度が高くなる地点では,CDB-P濃度が高い値を示した.また,CDB-P濃度とAl濃度との良好な相関性を得たことから,CDB-P堆積にはAlの加水分解過程におけるリンの吸着および沈降の寄与が大きいと推察された.
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© 2002 The Chemical Society of Japan
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