抄録
油処理脱灰法によって石炭類の脱灰効果と脱灰条件との関係を求めた結果,著者らの選んだ実験条件の範囲内では,
1)有煙炭は一般に無煙炭にくらべて脱灰されにくく,燃料比の平方根と脱灰率との間に相関関係がみられる。
2)鉱油は一般にクレオソート油にくらべて凝結油量が少なく,脱灰効果もよい。しかも油種と炭種との間には交互作用があって,燃料比の高い無煙炭ではクレオソートでも鉱油でも大差ないが,燃料比の低い有煙炭では鉱油を用いた方が脱灰されやすい。
3)媒質のpH,表面活性剤添加の影響,その他の諸要因や交互作用は上記1),2)にくらべて比較的少ない。
4)沈殿微粉と水洗原炭とについて試験した結果では,2次灰分と1次灰分の関係,1次灰分の形態等の影響が大きいようでこの点よく吟味する必要を認めた。
5)脱灰率は無煙炭では70%程度に達するが,有煙炭では平山炭を除き,おおむね50%を越えるものがなく,油処理のみで十分の脱灰を行うことは困難なようである。しかし脱灰炭の回収率は95%以上におよび浮遊選炭法とくらべると微粉の損失がきわめて少なく,脱灰率も大差ないので,炭種によっては浮遊選炭法に代替するものとして考慮する余地がある。とくに,処理油をガスあるいはタールとして回収し,あるいは脱灰炭を粘結性向上剤として膨潤炭と同様にとり扱い, コークス配合用, あるいは煉炭用として利用することが考えられる。
6)脱灰炭中の灰分の分析結果からは,成分と脱灰条件との問に明確な関係をうることが出来なかった。