抄録
本研究では、通常学級で「特別な支援が必要」とされる児童が授業中に、他児とどのようにかかわっているのかを明らかにするために、参与観察を行い、教室での対話過程を分析した。分析の視点として、ヴィゴツキーの障害学を手がかりとした。その結果、他児とのコミュニケーションが苦手とされる児童と他児とのかかわりに関して、以下の2点が示された。(1) 言葉を交わすことでコミュニケーションを成立させることが難しく、一見他者とかかわることがないようにみえる児童が、独自の方法を利用して他児とは異なる形式を含むさまざまなかかわり方を生じさせている。(2) その児童が生じさせる問題解決の方法は他児にも影響を与え、行動を変容させることにつながっている。これらのことから、教師が行う支援の方法として、教室環境を対象児がどのように利用しているのかをとらえ意味づけることや、他児とのつながりをつくる支援を行うことの重要性が示唆された。