工業化学雑誌
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ASTM銅板腐食試験の電子回折的研究
鹿 島実野瀬 良治
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1958 年 61 巻 12 号 p. 1551-1556

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抄録
ASTM銅板腐食試験の腐食標準片の変色段階はBoltにより銅の硫化物薄膜の干渉によるものと考えられていたが,表面生成物を電子回折により観測した結果,腐食度1a~3aでは亜酸化銅が生成し,3b以下ではβ-亜硫化銅,硫化銅が各単独あるいは両者の混合物の形で生成していることがわかった。1a~3aの変色領域は,酒石酸カリのカセイソーダ水溶液中での銅の電解還元による亜酸化銅薄膜の変色と順序が一致しており, また分光反射率測定より膜厚を計算すると腐食度とともに膜厚が増していることから,亜酸化銅薄膜の干渉によるものであることがわかった。元素イオウの流パラ溶液で銅板を処理した場合は, 亜酸化銅のほかに亜硫化銅が生成する。低級イオウ化合物, 酸素化合物, 窒素化合物などによる銅板腐食生成物の確定を試みたが,多くの場合確定困難であった。含イオウ添加剤は銅板腐食による変色を起すので, 結果の判定には特別な考慮を払わねばならない。
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