工業化学雑誌
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金属ケチルによるビニル重合
井上 祥平鶴田 禎二古川 淳二佐藤 良治
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1960 年 63 巻 12 号 p. 2211-2216

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抄録

エノール化しえないケトン,たとえばベンゾフェノンのような芳香族ケトンとアルカリ金属とから生成するケチル(ケトンのモノアルカリ付加物) は, アクリロニトリル, メタクリル酸メチルなどを重合させる。しかしケチルはスチレンを重合させることはできない。一方,ケトンのジアルカリ付加物は活性が大きく,スチレンをも低温で急速かつ定量的に重合させ得る。この場合いわゆるリビング・ポリマーが生成していることが認められた。共重合実験の結果, ケチルおよびジ付加物による重合反応はいずれも陰イオン的におこっていることがわかった。なおこの際生成する共重合体の組成は溶媒の影響をうけない。ケチルの重合触媒活性は,ケチルのケトンおよび金属成分の種類,あるいは重合の際の溶媒の種類によってかなり変化する。またある種のケチルあるいはジ付加物によってえられたポリメタクリル酸メチルは, 著者らのいわゆるF型結晶性重合体と同一の赤外線吸収スペクトルを有することがわかった。これらの結果から,可能な重合反応機構の推論を試みた。

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