工業化学雑誌
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固有成長量の意義と吸着帯後端の移動特性
船久保 英一永井 利一
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1961 年 64 巻 2 号 p. 317-319

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抄録

「固有成長量」C0VC0と名付ける値を設定することにより,試料溶液注入量(成長量)ν0がこれより少ない場合とその逆の場合の2種の条件下で,クロ々トグラフ吸着帯およびその透過液濃度分布がどのようになるかを検討し,クロマトグラフィーの実施上重要な幾つかの関係式を確立した。
ν0c0Vc0より大きい場合は「成長」および「保持展開」中にカラムを透過し,透過液前端の濃度は,初濃度C0を保持し, カラムの位置に関せず一定の移動率(Rg ) で吸着帯前端が移動する。逆に, ν0c0Vc0より小さい場合(この場合の成長量を自由成長量c0VcFと命名した) は, 展開の進行とともに移動率は漸減し, 自由展開段階にカラムを透過し,その透過液前端濃度はcF(<c0)となる。
吸着等温式がFreundlich型の系では,吸着帯後端移動率は「見かけの後端」を測定していることになり,測定値にばらつきがある。吸着帯後端の移動も前報に述べた後端の移動理論と同一の思想で統一される。アントラセン- アルミナ- ベンゼン系の実験で上記の概念を例証した。

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