1961 年 64 巻 4 号 p. 654-659
ニッケル- シリカ触媒上, 200 ~ 500 ℃ でトルエンの水素化反応性を検討した。その結果, トルエンと水素の混合物を触媒上に通ずると反応温度いかんにより種々の反応が起ることがわかった。250℃ から350℃ の温度域では核水素化反応は負の温度係数をもち,350℃ 付近にトルエンの比較的安定な温度域があった。またメタンの生成量にはピークがあった。これらの事実は核水素化反応の平衡論的制限によるものである。400℃ 以上になると水素化脱メチルが起りベンゼンとメタンが生成し,480℃ 以上になると核の水素化分解により多量のメタンが生成する。
またメチル基をもたないベンゼンの反応性をトルエンのそれと比較したところ,両者のベンゼン核の分解する温度は異なり,前者の方が低温で分解する。換言すればメチル基がベンゼン核の分解を抑制していることを見出した。
またトルエンの水素化脱メチル反応に対する触媒活性の経時変化と触媒還元温度との関係を吟味した結果,高温にて還元処理すると触媒活性の時間的変動が僅少となることを知った。
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