工業化学雑誌
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ポリピロリドンの熱安定性と無機塩濃厚水溶液を溶剤とする溶液の粘度
長岡 武高田 利宏讃山 一則谷山 雅一
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1962 年 65 巻 3 号 p. 427-431

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抄録

ポリピロリドン(PP)の性質として熱安定性およびZnCl2を主体とする無機塩濃厚水溶液を溶剤とするPPの濃厚および希薄溶液の粘度についてしらべた。PPの熱安定性はナイロン6等一般のポリアミドにくらべて著しく低く200℃ 以上ではモノマーの生成と重合度低下が認められ,安定な溶融状態は得られず,また分解は主に末端からのモノマー脱離反応であることを明らかにした。
PPは35%以上のZnCl2またはZnCl2と他の無機塩の混合水溶液に溶解し室温付辺では安定な濃厚溶液を与えることを認めた。溶液粘度ηはポリマー濃度Cp,メタクレゾール中の極限粘度[η],温度T(K℃)の関数として下式のごとく表わされた。
η=KCp5.8[η]5.2exp{Eη/RT}
ただしK は定数, 見かけの流動の活性化エネルギーEηは大約6~8kcal(10%<Cp<20%) である。
ηは無機塩濃度の増加に伴なって増大するが[η],Cp一定のときm-クレゾール溶剤のときよりはるかに低く,温度依存性も少なく,また20~30℃ では粘度安定性も良好であり,無機塩溶剤はPPの紡糸用溶剤として工業的に有利であることを認めた。
その他興味ある事実としてZnCl2溶剤中の極限粘度は[η](m-クレゾール)の1/4~1/5程度であること,ZnCl2-Mg(NO3)2系混合溶剤ではPPの均一な濃厚溶液を与えるが,希薄溶液は相分離のため得られないことを認めた。

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