工業化学雑誌
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クラフト蒸解における脱リグニンの機構
坂田 功
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1963 年 66 巻 4 号 p. 504-508

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抄録

硫化(NaSHまたはH2Sによる)およびスルホン化した材[S材]のソーダ蒸解およびアルカリ処理した材[A材]のクラフト蒸解を速度論的に研究し,クラフト蒸解における脱リグニンの機構について考察した。
1)S材のソーダ蒸解における脱リグニンの速度は,蒸解の初期には非常に大きいが(クラフト蒸解のそれに匹敵する),蒸解の進行に応じて急激に減少する。また脱リグニンの活性化エネルギーは初期には小さいが(21~23kcal),末期には大きくなる(38~39kcal)。従って,S材のソーダ蒸解は,蒸解の初期にはクラフト蒸解の機構に類似しているが,末期にはアルカリによるイオウの脱離によってリグニンの縮合が増加して,漸次ソーダ蒸解の機構に近づくものと考えられる。
2)クラフト蒸解においては,蒸解の初期にリグニンがまず硫化されることも重要ではあるが,更に脱リグニンの速度を低下させずに円滑に蒸解を進行させるには,リグニンが蒸解中の加水分解と並行して,継続的に硫化されることが必要であると考えられる。
3)A材のクラフト蒸解の速度は未処理材のそれに比べて,アカマツにおいては著しく減少するが,ブナでは大差がない。これは針葉樹リグニンが広葉樹のそれに比べて,アルカリによって縮合しやすいことを示すものである。

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