工業化学雑誌
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ポリβ - プロピオラクトンの分子構造
和才 剛三枝 武夫古川 淳二
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1964 年 67 巻 4 号 p. 601-604

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抄録

β-プロピオラクトンをジエチル亜鉛-水系触媒を用い低温(-25~-30℃)で重合させて得られる重合体は,結晶性で重合度もかなり高く,([η]=0.73)延伸が十分可能であった。この重合体を熱延伸した場合と,冷延伸した場合とでは,分子構造が異なる。X線解折による繊維周期は前者で7.02Å となり,後者で4.82Å となる。前者をα 型とし,後者をβ 型とする。α 型は21らせん構造を有し,β 型は平面ジグザグ構造を有している。
β 型を65℃ で2時間熱処理を行なうと,完全に熱延伸した場合と同様の繊維周期を持つα 型へ転移する。また重合体のクロロホルム溶液よりフィルムを作成する際,溶剤を急速に蒸発させるとβ型が得られ,徐々に蒸発させるとα 型が得られる。両者の赤外吸収スペクトルは顕著な相違が観察される。このことは赤外吸収スペクトルが分子間相互作用を無視できるものであるとすると,このような顕著な相違は分子構造の相違を意味するものであり,先きのX線解折の結果と矛盾しない。

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