工業化学雑誌
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ジエン系ビニルピリジンラテックスの乳化重合における動力学的検討
上野 健蔵阿部 進
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1965 年 68 巻 2 号 p. 401-408

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抄録

繊維とゴムの界面接着剤として現在多量使用されているジエン系ビニルピリジンラテックスのポリマー組成はブタジエン:スチレン:2-ビニルピリジン=70:15:15の比率よりなっているものがほとんどを占める。
本報はこのものを工業規模にて生産する場合の基礎資料として本反応系の動力学的特徴を知る目的のため行なわれたものである。検討の結果,この反応系はHarkinsの唱える乳化重合の第一段階(セッケンミセルの生成より消失まで)においてはSmith-Ewartの乳化重合理論を完全に満足するが,一方第二段階(もっぱらポリマー・モノマー粒子による連鎖成長反応が起こっている時期)においては上記理論を満足しないことがわかった。
この理由としては,Smithらが反応速度を考えた時無視できると判定した一反応個所である水層でのラジカル反応がモノマーに水溶性ビニルピリジンを持つ本反応系においては反応速度に影響をもつ程の大きさで起こりポリマー・モノマー粒子数がセッケンミセル消失後も開始剤濃度により増大するためと推論されかつ実証された。従って,この粒子数増大に対する補正を行なうことにより,Smith-Ewart理論は当系に適用できることを知った。
その他,当反応等に関する連鎖反応速度定数,平均重合度など本反応系動力学的定数の決定も同時に行なわれている。

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