抄録
ジビニル-n-ブチラール(VB)を合成し, これを50℃でラジカル塊状重合した。得られたポリVBは可溶性であり,アセタール含量は計算値とよく一致した。このポリVBを塩酸ヒドロキシルアミンを用いてポリビニルアルコール(PVA)に加水分解した。生成PVAは,ポリ酢酸ビニル(PVAc)から誘導したPVAと化学構造はほぼ同じであるが,重合度は低かった(約50)。このPVAは普通のPVAに比べて,赤外吸収スペクトルがいくぶん異なり,またアセタール化に対する反応性が著しく低かった。さらに, このPVAから誘導したPVAcの含水アセトン中におけるアルカリケン化速度は,普通のPVAcのそれとかなり相違した。これらの結果から,ポリVBから誘導したPVAは,普通のPVAとかなり異なる立体構造を持つと推定し,その立体構造について少し議論した。