抄録
アクリロニトリルの乳化重合機構を,重合速度,重合度および重合体粒子数から考察した。アニオン系乳化剤を用いた乳化重合では,沈殿重合と同様に,重合速度は単量体濃度に関して2次になり,開始剤濃度に関しては過硫酸アンモニウムの凝析効果によるずれを考慮に入れれば,ほぼ1/2次が成り立つと見なすことができ,かつ重合の活性化エネルギーが沈殿重合の場合とほぼ等しいので, 高重合率では沈殿重合と類似の機構で重合が進行しており,(A)重合率約25%以上では重合は主として重合体粒子の表面で起こる。(B)反応の場の単量体濃度m と見かけの単量体濃度M との間に吸着平衡m=(β/Vp1/2)M2(Vpは反応の場の有効体積,βは重合体粒子の数もしくはその凝集状態を支配する重合条件および重合温度によって変化する係数)が成り立つという二つの仮定をすれば,得られた重合速度,重合度および重合体粒子数のデータは一応近似的に統一的な解釈ができる。更に重合体粒子形成過程での乳化剤の作用について調べ,CMC以下での重合の開始機構について述べた。