工業化学雑誌
Online ISSN : 2185-0860
Print ISSN : 0023-2734
ISSN-L : 0023-2734
塩化ベンジルの硝酸酸化の速度論
小方 芳郎沢木 泰彦手塚 洋松永 藤尚
著者情報
ジャーナル フリー

1966 年 69 巻 5 号 p. 901-906

詳細
抄録

塩化ベンジルのベンズアルデヒドへの希硝酸(<10%)酸化機構を40vol%ジオキサン中で速度論的に研究した。反応生成物をガスクロマトグラフィーで追跡した結果, この酸化反応は途中に塩化ベンジルの加水分解生成物であるベンジルアルコールを経由してベンズアルデヒドを生成することがわかった。塩化ベンジルの加水分解はほぼSN1 機構に従い, 加水分解速度は酸度に無関係で, 5% 以下の硝酸濃度ではべンジルアルコールの酸化よりも速い。ついで, 希硝酸によるベンジルアルコール類のベンズアルデヒドへの酸化を40vol%ジオキサン中で速度論的に検討した。この酸化は亜硝酸により有効に開始せられるが,その速度は,v=k[ベンジルアルコール][HNO3]で示され,亜硝酸の濃度には無関係である。酸化速度は酸度と共に増加し,logkと溶液の酸度関数H0 をプロットすると, 傾斜- 2 の直線となる。見かけの活性化エネルギーおよびエントロピーは, それぞれ28.3 kcal・mol-1,-52.7 e.u.である。ベンジルアルコールの置換基効果はハメット則を満足し,-2.25のρ-値を与える。この酸化機構として, α-オキシベンジルラジカルと二酸化窒素との間の速やかな可逆カップリングについて, 速度決定段階としてα-亜硝酸オキシベンジル(I)の加水分解を含む機構を考えた。

著者関連情報

この記事は最新の被引用情報を取得できません。

© 社団法人 日本化学会
前の記事 次の記事
feedback
Top