工業化学雑誌
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4,6-ジチオスルファトトリアジニル基を有する反応性染料
山瀬 威郎阿部 康夫下条 政尋黒木 宣彦小西 謙三
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1966 年 69 巻 7 号 p. 1310-1315

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抄録

すでに著者らはチオ硫酸基を有する染料が6-ナイロン,絹にきわめて堅ロウに反応性染色を行なうことを確かめたので,この基を4,6-ジ置換トリアジン型染料に応用し,4,6-ジチオスルファトトリアジニル基を有する各種染料を合成して,これらの反応性を検討した。また著者らが以前合成した各種置換基(塩素,エトキシ基,p-ニトロフェノキシ基およびフェノキシ基)を有する4,6-ジ置換トリアジン型染料と比較した。
すなわち,まず4,6-ジチオスルファトトリアジニル基を有するモデル化合物を合成し,繊維のモデル化合物であるε-アミノ-n-カプロン酸およびn-ブチルアルコールとの反応を行なって,その反応性および結合様式について検討した。さらにこの置換基を染料に適用し,チオ硫酸基を有するアゾ染料およびアントラキノン染料を合成して,6-ナイロン(アミラン),絹およびビスコースレーヨンに対する反応性染料としての適用性,色調,堅ロウ度などを調べた。本染料の合成は,アミノ基を有するアゾ染料あるいはアントラキノン染料に塩化シアヌルを縮合させてジクロルトリアジニル基を有する染料を得,さらにこの染料とチオ硫酸ナトリウムとを反応させることによった。本染料を用いて,6-ナイロン,絹を酸性染色,ビスコースレーヨン,絹を中性染色し,アルカリ処理によって固着させた。なお繊維と未結合の染料はソーピングおよびピリジン,アセトン抽出によって除去した。染料の固着はすべて良好であったが,6-ナイロンでは特にすぐれており,またいずれの繊維にもスルホン酸基を有する染料が一般によかった。各置換基の反応性は大体において, 塩素> チオスルファト> p - ニトロフェノキシ> フェノキシ> エトキシの順であった。チオ硫酸型染料は繊維にかなりの反応性を示し,染料としても安定なので,反応性染料として有用である。これらの判定は肉眼によるもののほか, Kubelka - Munk 式のK/S 値より固着率を計算で求めた。色調は黄, だいだい, 赤, 紫および青色系統であり, 堅ロウ度は日光,洗タク,摩擦ともすぐれていた。染料-繊維間の共有結合生成の証拠は既報と同様の方法で,またその反応形式はモデル物質の反応により確めた。

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