工業化学雑誌
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ポリエチレンテレフタレート繊維の示差熱解析-微細組織と融解挙動
油林 恒夫折戸 善一山田 信夫
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1966 年 69 巻 9 号 p. 1798-1802

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抄録

ポリエチレンテレフタレート繊維は未延伸糸のときは非晶状態で,その示差熱曲線はガラス転移や低温結晶化現象を明瞭に示し,融解ピークは単峰である。この試料を80℃で延伸すると,ピークの低温側に変化が起こり,延伸比の増加とともに肩状から新しいピークへと発達する。そして最大延伸倍率に近づくと,この低温側ピークは強大となり,一方未延伸糸で見られた高温側ピークは延伸比の増加とともに減少する。Whiteは66-ナイロンの延伸による新しいピークを結晶の配向解消であるとした。しかし本研究での延伸倍率を系統的に変化させたPET繊維の示差熱解析および種々の構造解析的知見からこの低温側ピークは束状結晶の融解に対応し,高温側ピークは折たたみ結晶の融解によると結論された。さらに定長および自由長熱処理の効果を検討した。別に繊維の定長示差熱測定法を開発し,通常の測定が昇温過程で自由長熱処理効果を示すのに対し,本法では固定長熱処理効果を有すること,そして折たたみ結晶への成長が妨げられることを認めた。た◇なお熱処理は空気浴中で行なった。

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