工業化学雑誌
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示差熱分析によるポリエチレンテレフタレートの酸化分解現象の研究
内記 秀次加藤 忠男
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1966 年 69 巻 9 号 p. 1816-1820

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抄録

ポリエチレンテレフタレートの示差熱曲線に観察される融解前の発熱ピークは,従来結晶化に基づく熱特性であると考えられていたが,この現象に関して研究した結果,次のような知見を得た。(1)発熱ピークは示差熱分析の測定条件が,酸素を含むふん囲気,粉末試料および加熱速度5℃/min以下の三条件を満たす場合に観察され,不活性気流中では現われない。(2)発熱ピークが現われる230℃前後の温度において,粉末状試料を空気中熱処理すると,酸素を吸収して分解し,カルボキシル基の増加および粘度の低下が著しい。また,(3)酸化防止剤を添加したポリマーは,同条件においてわずかな変化を受けるにすぎない。
以上の実験結果から,ポリエチレンテレフタレートの融解前発熱ピークは,酸化分解に起因する現象であることが明らかになった。市販各種のポリエステルの空気中における示差熱曲線を測定したところ,特異な酸化分解ピークを示すものがあった。

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