工業化学雑誌
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4-メトキシ-α-ナフトールの光化学初期過程
井上 英一小門 宏山瀬 利博
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1967 年 70 巻 12 号 p. 2337-2344

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抄録

4-メトキシ-α-ナフトールは種々の溶媒中で320mμ にピークをもつ吸収スペクトルを示し,これを313mμ 紫外光で照射すると320mμ の吸収が減少する。この光化学過程はエリスロシン等の色素により増感される。4-メトキシ-α-ナフトールの光化学変化量を320mμ 吸収の減少量で表わして量子収率を測定した結果,量子収率に対する4-メトキシ-α-ナフトールの濃度,光照射時間依存性は2~16×10-5mol/l,2~15分の範囲では小さく,その値は一般に低い(<0.1)。また四塩化炭素,クロロホルムのような塩素を含む溶媒では比較的大きな値(0.12)を得,二臭化メチレン,二臭化エチレン,α-ブロムナフタリンのような臭素を含む化合物を添加したとき,いずれも量子収率はいちじるしく増大した。4-メトキシ-α-ナフトールーメタノール溶液に二臭化メチレンを添加した系の紫外光照射によるケイ光は添加剤濃度に依存して消光され,ついにまったく発光が認められなくなり,これらから光化学過程における外部重原子効果が推測された。さらに溶存酸素濃度が減少すると量子収率は著しく低下した。色素による増感と以上の事実を合わせて4-トキシ-α-ナフトールの光化学反応は三重項状態を経て反応が進むと推定された。光化学反応中間生成物として青色の物質が認められるが,これは4,4'-ジメトキシ-2,2'-ジナフチル-1,1′-ジキノンであることが推定され,このものはさらに光化学反応をうけて退色する。増感色素としてはキサンテン系色素のうちでもハロゲンを含む色素の増感効率が高く量子収率の逆数と4-メトキシ-α-ナフトールの濃度の逆数の間に一次関係が成立することが認められた。増感色素はいずれもケイ光を発するが,これは4-トキシ-α-ナフトールの添加によって影響されなかった。増感色素間の量子収率における差異はおのおの色素間に置換されているハロゲンの効果によるものと考えられ,313mμ 光照射の際認められた外部重原子効果に対応して内部重原子効果に基づく差異と推定される。

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