工業化学雑誌
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-酸化ビスマス(III)の新結晶変態の生成-
真鍋 和夫御手洗 征明久保 輝一郎
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1968 年 71 巻 11 号 p. 1828-1835

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抄録

酢酸ビスマス(III)(Bi(CH3COO)3)の熱分解の機構を,熱重量分析,示差熱分析,X線分析,質量分析および化学分析の方法で追跡した。結果はっぎの通りである。
酢酸ビスマス(III)は,50~200℃ で酢酸を放出して分解し,酢酸ビスムチル(BiOCH3COO)を生成する。
酢酸ビスムチルは,280~320℃ でアセトン,炭酸ガス,水などを放出して分解し金属ビスマスとなる。金属ビスマスは空気中の酸素により酸化されて酸化ビスマス(III)となるが,分解温度370℃ 以下では酸化ビスマス(III)の新結晶変態を生成し,分解温度390℃ 以上ではα-酸化ビスマス(III)となる。
この結晶転移は, 370~390℃ で生起し, 非可逆的であり, 発熱反応である。
この新酸化ビスマス(III)は,酢酸ビスマス(III)の空気中の熱分解で, 分解温度320℃ で純粋なものとして生成する。そして,それはX線回折図形から考えて,歪んだ三二酸化マンガン型の結晶構造(正方晶系)をもつ。

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