1969 年 72 巻 4 号 p. 839-843
熱処理によりLi2O・2SiO2の微結晶を析出する結晶化ガラスに希土類イオンをドーピングして,その発光スペクトルを調べた。そして,発光スペクトルの変化と母体ガラスの結晶化の様子との相互関係について検討し,ガラス内での希土類イオンの分光学的挙動および存在状態,特にこれに対する有効な結晶場の様子を明らかにすることを試みた。得られた結果はつぎのようである。
少量のP2O5を含むSiO2-Li2O系ガラスへの希土類元素の添加は結晶化を抑制することがわかった。
また,Eu3+を含むガラスの発光スペクトルで,母体ガラスの結晶化度が増すにつれて,Eu3+の発光スペクトルの結晶場による分裂が明確化すること,5D0→7F0遷移の発輝線の半値幅が減少すること,磁気双極子により許された5D0→7F1遷移の発光強度が相対的に強くなることなどが観察された。これらのことは,Eu3+に対する結晶場の均一性ならびに対称性の上昇を意味している。
充分に結晶化したガラス内のEu3+の5D0→7F0遷移の発輝線の半値幅を,他のガラス系及び他の結晶内のEu3+の半値幅と比較する時,Eu3+は析出主結晶相に近いと思われる,比較的規則正しい構造を持つ非晶質部分に存在しているのであろうと推察される。
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