工業化学雑誌
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三塩化クロム付加錯体とジエチルアルミニウムクロリドとの反応
荒川 高晶
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1969 年 72 巻 8 号 p. 1733-1738

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抄録

CrCl3・Ln(L:メタノール,酢酸エチル,アセトン,ピリジン,ジエチルアミンなど,n=2ないし4)とジエチルアルミニゥムクロリド(以下AlEt2Clと記す)とを-20~-30℃の低温で反応させると,それらの付加錯体が生成する。この錯体はCrCl3・Lm・AlEt2Cl(m=1,2)(1)の他に,一部クロムがアルキル化されたCrEtCl2・Lm・AlEtCl2(2)も含まれている。これらは一般に黄褐色の不安定な固体で,空気中では激しく煙を出して分解する。この錯体だけではエチレンを重合させる活性がほとんどないが,これにAlBr3やSnCl4などのルイス酸を加えるとエチレン重合の活性をもつ。錯体はLの種類により分解温度がことなり,エステルの場合は普通120℃以上,アミン,メタノールのときは80℃付近,アセトンの場合は35℃以上で激しくガスを発生する。ところが,このいずれの場合もAlBr3のようなルイス酸を共存させると溶媒に溶解し易くなり,常温あるいはそれ以下の温度でもエタンを主成分とするガスを発生する。このことから,エチレンおよびルイス酸が存在する重合条件下では,(1)が溶媒中で(2)のようにAl-Etの結合の一部がCr-Etに変化し,これがルイス酸の助けをかりて重合の活性種になり得るのであると推論した。また,重合触媒として働いている活性種のクロムには少なくとも1個のLがかなり強く結合しているため,Lの違いにより重合活性に大きな差が出るのであると考えた。

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