1969 年 72 巻 8 号 p. 1724-1732
三塩化クロムをアミン,カルボン酸エステル,アルコール,ケトンなどと反応させて,三塩化クロムのN,O-化合物付加錯体を合成した。この錯体は普通CrCl3・Ln(n=2~4)なる組成で,化合物中のNまたは0がクロムに配位した安定な結晶または粉体として得られる。
次にこの錯体を用いてエチレン重合の接触作用を調べた。一般的に行なわれているチーグラー型重合の条件下では,CrCl3-有機アルミニウム化合物系がエチレンに対してほとんど重合活性をもたないのに対し,この錯体CrCl3・Ln-有機アルミニウム化合物系はエチレン重合に充分高い活性を示し,特に低級カルボン酸エステル,アルコールまたはケトンとの三塩化クロム錯体は高活性である。種々の錯体について重合試験をした結果,配位している化合物の電子供与性の大きさと重合活性との間に関係があることを見出した。錯体としては,アミンではジメチルアミン錯体,アルコールではメタノール錯体・カルボン酸エステルでは酢酸メチル錯体,ケトンではsec-ブチルメチルケトン錯体がそれぞれのグループ内で最高の活性を示した。この中でもメタノール錯体-A1・Et2C1系が最も活性が高く,TiCl4-AlEt3系の数倍以上の活性をもっていた。
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