日本化學會誌
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乳汁に關する研究(第三報)
乳汁中の鐵,銅及び亞鉛の含量に就て
近藤 金助森 茂樹
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1932 年 53 巻 12 号 p. 1190-1196

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抄録

1) Holstein種乳牛2頭、Toggenburg種山羊2頭の第一及第び二泌乳期の乳汁を300日乃至560日に亘つて4週間毎に採取して其のろちのFe, Cu及びZnの量を逐次定量した。其の量は泌乳期、飼料及び乳畜の品種等によつて一定しないが最大最小量と全平均値とを示せば次の通りである。
2) 乳汁中のFe-量は上表に示した如く從來報告せられてある量よりも遙かに少ないのが眞に近い量であることを確め、更に電氣透析實驗の結果から乳汁中のFeの半分はLipoid-Formであるが他の半分の一半はSimple Ion Formで他の一半はComplex-Formであることを推定した。
3)汁乳中のFeが過少であることは乳畜自身にとりては幼畜を最も安全に哺育するための自然の妙理に適合したことであるが乳汁及び其の製品を特に幼兒又は病弱者の食糧に供する場合にはFeを補足しなければならない。
4) 食物中のFe(有機形又は無機形)が造血劑としての役目を果す為めには一定量のCuが必要なるのみならずCuは血液及び細胞内にあつてFeと殆んど同じ役割を演ずることを論述し併せてMnの榮養化學的意義をも附加した。
5) 然る上、吾人の實驗結果を見れば乳汁中のCu-はのFeの造血作用を助けるためにも過少である。夫故に乳汁の榮養價を高める為めにはFeの外にCuをも加へるべきである。それにはFe及びCuの含量多き緑葉菜類を乳汁又はその製品に加へれば易く目的を達し得るのである。
6) Znは獨り乳汁中に於てのみならず動植物界に廣く且つ佳なりな量に分布して居る。その意義に就ては知る所未だ少ないが其の量が相當多いことはZnも亦Cu又はMn等と對等した特殊な役割を持つものであることを物語るのである。
本研究は文部省自然科學奬勵費の補助によつて遂行し得たのである。茲に同省に對して厚く謝意を表する次第である。

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